ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の作業部会2で作業協力者になりました


目次
  1. ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)とは
  2. 作業部会2(実装)とは
  3. 参加の目的
  4. まとめ

12月から、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の作業部会2で作業協力者になりました。 概要や参加を決めた経緯などを紹介します。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)とは #

ウェブアクセシビリティ基盤委員会とは、公式サイトの文を引用すると以下のような説明になっています。

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(Web Accessibility Infrastructure Committee)は、日本におけるウェブアクセシビリティの公的規格であるJIS X 8341-3の理解と普及を促進するとともに、JIS X 8341-3を利用してウェブアクセシビリティを高めていくために必要な基盤を構築するために、さまざまな活動を行っています。

JIS X 8341-3はいわゆるW3CのWCAG及びその一致規格であるISO/IEC 40500がJIS規格になったものです。最近だとISO/IEC 40500:2025がWCAG2.2の一致規格として改正されたことにより、JIS規格もWAICでJIS X 8341-3改正原案作成委員会が発足され、改正に向けて動き出しています。

現時点で既に、弊社の小林大輔さんWAICの作業部会1(理解と普及)にて活動を行っています。そのため、既に会員企業としての登録はされている状態で比較的参加しやすい状態ということもあり、参加させていただきました。これでサイボウズからの参加は2名ということになります。

参加形態には主に「作業部会委員」と「作業協力者」の2種類があるのですが、作業部会2ではまずは「作業協力者」としての参加になります。今後貢献できる見込みがあると認められ、自分としても活動を継続していきたいと思ったら、「作業部会委員」としての参加に変わると思います。

作業部会2(実装)とは #

作業部会2(実装)は、

WG2(実装ワーキンググループ)では、JIS X 8341-3の実装に必要な資料の作成及び公開、また実装の際に生じる諸問題の解決に向けた議論を行います。

という説明がされています。

「実装」と書いてありますが何かの実装を行うわけではなく、アクセシブルなWebサイトを実装するために必要な情報の整備だったり、それに伴って出てきた問題の解決に向けた議論を行うというイメージです。

具体的にはアクセシビリティ サポーテッド(AS)情報及びそれを作成するためのテストケースの作成が一番のメインです。 アクセシビリティ サポーテッドはWCAGで定義されている言葉で、WCAGの達成方法が主要なブラウザや支援技術(AT)でサポートされているかどうかを表すものです。

例えばSVGの<title>要素1つとっても、<button><a>要素にネストされたSVGの場合にはSafari + VoiceOverで<button><a>要素のaccessible nameとして上手く読み上げられないという問題があります。

同じくSafari + VoiceOverで、一定の条件の場合を除き、list-style: noneを指定した<ol>及び<ul>要素が、明示的にrole="list"をつけない限りリストとして読み上げられないという仕様もあります(こちらはバグではなく意図的な動作とのことです)。

また、Accessibility SupportではWAI-ARIAやHTML要素が各ブラウザ・ATの組み合わせで一貫した動作をしているかというテスト結果が提示されています。

このようにブラウザ・ATの組み合わせによって読み上げの挙動は様々です。読み上げの挙動の多様性によって、Webサイトの作者の環境ではWCAGの基準を達成していても、あるユーザーの環境では達成していていない、ということが起こり得ます。そのためWCAGの達成方法に対して、どのブラウザとATの組み合わせでどんな読み上げがされているか、その読み上げ方はWCAGの基準を達成していると言えるのかどうか、というデータベースを「AS情報」として作成しています(おそらく現状スクリーンリーダーのみを対象としているのでここでは「読み上げ」と表記していますが、将来的にはスクリーンリーダー以外のATも対象となると思います)。

定期的にASテスト体験会というイベントが開催されていて、WAICのメンバーに説明・サポートしてもらいながら実際にAS情報を作成してみることができます。僕も過去に一度参加したことがあるので、興味のある方は次回開催時に参加してみてください。

また、それ以外にも「達成基準及び実装方法に関する統一見解の検討」ということで、様々な議論が行われているようです。

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参加の目的 #

元々、漠然と「アクセシビリティに関する活動をもっと領域を広げてやっていきたい、より標準に近い部分にも貢献していきたい」と思い、WAICについて前述の小林さんに少し話を伺っていたのですが、なかなかちゃんと検討する時間が取れず保留にしてしまっていました。 しかしTPACに参加して、標準レベルでの話やACD (Accessibility Compat Data)の話を聞き、ブラウザ・ATの組み合わせ間での相互運用性という領域により貢献していきたいと思いました。これは普段アクセシビリティを意識した開発を行っている中で問題となったり検証しなければならなくなることが比較的多い部分だと思っていて、ブラウザ・ATの組み合わせ間で一貫した挙動を保証したり、「この実装方法であれば一貫した挙動を保証できる」というデータがあることで、アクセシブルな実装をより低コストで行うことができると考えています。また、前述のACDやWCAG3などは特にWAICの活動に関係していて、W3Cでの最新情報をキャッチアップしたり、逆にWAICの活動で出てきた問題や改善点をW3C側にフィードバックすることもできると考えています。

まとめ #

どのくらい貢献できるか全然未知ですが、尊重・保守するところはしつつ、新しいことも色々提案したり貢献したりしていけたらと思います。